2012年12月24日月曜日

20年後

11月、葉山の友人Yさん家族が遊びに来てくれました。
妻の大学時代の先輩で
長女のさとちゃんは息子多聞と誕生日が近くて
ふたりの子どもが同時にできたような、
そんな気持ちは、きっとお互い持っているような気がします。


Yさんはいつもダナーのハイカットブーツを履いていて
それがまたとてもよく似合う。
愛用しているダナーは自分で靴底を修理しながら
もう20年は履いているそうです。
人間にしたらいくつくらいでしょうか。
私は健気で逞しいその靴の雰囲気がとても好きです。

そんなダナー先輩に憧れて
20年愛用してもらえるように
Yさんの靴をつくりました。
栃木レザーの肉厚のオイルレザーと
丈夫で弾性のあるウォーキングソール。

20年後、
子どもたちは二十歳。どんなことに夢中になっているでしょうか。
まだいっしょに暮らしているかな。
きっと子どもたちは覚えていないけれど
覚えていないからこそ、
きっと子どものころが知りたいに違いない。
子供に聞かれるかもしれない。

その時、
健気で逞しく佇むお父さんの靴が
この秋を、この時代を思い出すトリガーになってくれたら
この上なく嬉しい。

20年後もきっとまだ福島では放射能と向き合っているに違いない。
今日の子供たちは私たちを軽蔑するだろうか。いや、しないだろう。
きっと私たちよりもずっと強い人だと思うから。
ナウシカがそうであったように。



2012年12月22日土曜日

縫うひととき

久しぶりの更新になってしまいました。
いろんなことがあって、何から書いていこうか
悩んでいます。

私のつくる靴は
すべて手で縫う箇所があります。

ミシンでは心許無いところは
錐で穴を空けて、太い糸を交差させてしっかりと縫います。
革の表情をみながら程よい加減で
優しく力を込めて、祈りを込めて。

それはおまじないか、願掛けのような仕業です。

履く人のことを想いながら
靴をつくれる喜びが
あつらえ靴にはあります。

糸が切れてしまったら
また会いましょうのsignです。


写真は、先日糸が切れてしまった
スターネットの星さんへつくったオーダーメイドシューズ。
東京も、山も、これで行くのよ。と
いつも笑顔で話してくれます。

2012年11月12日月曜日

アロマペンダントづくりワークショップ


アロマペンダントをつくってみる

靴づくりで出てくる小さな革のハギレ。
いろんなの動物の、いろんな色。

小指の先ほどの小さな容物を
お守りのように首から提げて使います。

場所   てのひらワークス 茂木町
日時   12月2日(日)14時~15時半
参加費  2,500円(お茶付き)
注意事項 温かくしてお越し下さい。

予約制ではありませんが
つくってみたい方はお電話ください。
詳しい住所をお伝えします。
(2010年海の日 APbankフェスにて、たくさんつくりました。)

捨てる前に一度立ち止まってみる。
なにかに別のカタチで生まれ変わるかもしれない。
あるモノを残すこと、の先に
なかったものが生まれてくる、と思います。

初めて干し柿をつくっています。

2012年11月8日木曜日

カフェのご主人

山梨でのWSの前日、富士川町にできたアヌッタラへ行ってきました。
アヌッタラは日蓮宗昌福寺の門前にあるコミュニティハウス。(だと私は思っている)
「ナイスタイムカフェ」と「育てるきっちん」のふたつのお店が出迎えてくれます。

アヌッタラ内装を手がけた森沢さんのオリジナル薪ストーブ。

ナイスタイムカフェのご主人中村さんと初めてお会いしたのが、
まだアヌッタラが出来る前の1年前の夏。
そのころは私は山梨への移住を考えていて、昌福寺へ相談したところ
先に移住を決めた中村さんを紹介していただいたことが縁でした。
同じ時期に同じ場所への移住を考えた中村さんご一家は私たちにとって
とても心強い存在であり、短い時間のなかで交わした会話に
当初ずいぶん助けられたことを思い出します。

この春に茂木に引越し先が見つかり、
移住前の3月、山梨移住のことでいろいろとお世話になった昌福寺へ挨拶に行きました。
中村さんとはタイミングが合わずお会いできず、
今回やっと1年ぶりに再会することができました。
会った瞬間になんだかほっと安心した気持ちになったことが自分でも印象に残っています。

はじめて会った時は
中村さんも私もまだこの先のことが揺らいでいて落ち着きのない暮らしでしたが
この1年で、中村さんはお店を山梨で再開することになり、私も茂木でアトリエを持つことができて、お互い地に足を着けることができました。
中村さんがとても素敵な人と場に巡り合い、いま目の前にそれが新たなナイスタイムカフェというカタチへとなって、あの日中村さんご夫婦が笑顔で出迎えてくれたことが
自分のこと以上に本当に嬉しかったのです。
人としても仕事にしても大先輩である中村さんに対して、
大変おこがましいのですが、
自覚していなかったけれど、私は心の片隅で気になっていたようです。

そしてそれは中村さんも同じであったことを今回知ることができました。
今回はカフェでゆっくりとお話する時間を持つことができて
優しいお気遣いのお言葉をいただき、こんなに優しい人は初めてだと思いました。
奥様も私の妻にいつも話かけてくれて、楽しそうな妻の弾んだ声が聞こえてきます。
私はずっと食べたかったエビオムライスと珈琲を注文して
家族でお腹もココロも満たされた、山梨旅行初日になりました。

私にはお気に入りのカフェは
山梨のナイスタイムカフェと鎌倉の416
それらに惹かれる理由、カフェに求めるものは、
当たり前のことですが美味しさ、
そしてなによりも、ご主人のお人柄。
でもなかなかこの二つを兼ね備えているカフェはありません。
ぜひ足を運んでください。ちなみにふたりとも偶然、中村さんです。

写真は昌福寺からみるアヌッタラ(2012年3月改装中)
富士川町は山と川の景色が素晴らしいのです。

2012年11月4日日曜日

山羊飼いの靴


オーガニックハンドルームの靴は
できる限り手を加えずに作りました。

当初の意図にはありませんでしたが
とりあえず出来たその靴には
手を加える余地が残されていることに気付きました。

履き手が使いながら、自分の暮らしへと手を加えていく。
エイジングとはただ手沢が現れてくるだけではなくて
その人形(ヒトナリ)のデザインが現れていくことでもあると思います。
それが出来る人になって
そのお手伝いができる人となって
自分がつくった赤子のような靴を見守っていきたいと思っています。

写真はスターネット益子店スタッフの早川さんの靴。
山羊のメメちゃんの毎日のお散歩は
斜面を登ったり降りたり、けっこうハードなんだそうです。
そんな日課のお仕事を考慮して
底ゴムの張替えの時に
元よりもすこし軽くして、接地面積もすこし広げました。
加工によってすこし履き心地がゆるくなってしまいましたが
「冬は靴下を重ねて履くから、問題ないですよ。」と満足してくださいました。
暖かい季節になったら、中敷で調整しようと思っています。

つくることだけに終わらずに
繕いながら、その革が地に還るまで手を添える、
始末の良い仕事にしたい。


と、格好いいこと言っていますが
オーダーメイドシューズでは調整、修理は日常茶飯事です。
満足のいく履き心地をつくり、維持するのは簡単じゃあありません。
日々頭を抱えております。

2012年10月29日月曜日

感動するワークショップ


先日開催した
サンダルワークリレイションVOL2 at山梨
参加者のみなさんには
ものづくりの現場でしか味わうことのできない
様々な体験があったと思います。

私がこのWSで確信したことは
サンダルをつくることから得る経験は
人それぞれまったく違うということでした。

手縫いひとつにしても、思ったより愉しいと思う人もいれば
もう懲り懲りと思う人もいる。

同じことをしても、そこから学ぶことは皆違うということ。
それが私の予想以上にとても豊かであり、輝いていること。

事前に準備していた
伝えたいことはたくさんあったけれど
そのほとんどがどうも私のエゴだったようです。
伝えなきゃならないことがあるなら、
それは参加者と同じく、私がこのWSで学んだことですね。

今回も私は参加者のひとりひとりから
サンダルづくりを学ぶことができました。
私にとっても2日でサンダルを創りだすことは難題です。
でもみんなでその難題に取り組み、励まし合い、称え合うことで
くじけそうになっても、最後まで取り組めるのだと思っています。
私はその姿に心から感動しています。

参加者さんの一人から
こんな感想を頂きました。(一部)
「気づけばてのひらワークショップ3回目でした。
なので安心して作れました。」
このワークショップは自分で考えなければならないから
焦りや緊張、不安な気持ちが当然大きいはずです。
だから、前述の参加者同士の相互扶助に加えて
安心して集中できる場と時間を用意することが
私のこのWSの役目なんだと確信しました。
 
 自分で考え、手を動かしてくださいね。
 私は助言をするだけです。
 でも、必ずあなたのサンダルを完成させますよ。
 だから失敗を恐れず、時間を気にせず、自分を偽らず、
 無我夢中になってつくってくださいね。

次からは 
この私の姿勢を最初に伝えようと思います。


パタゴニアの南喫茶店、
今回のWSに相応しい場所だったと思います。
明るくて愉快な齋藤夫妻のいえで
わたしたちは安心してモノづくりができました。
どうもありがとう。

2012年10月20日土曜日

自分を偽らない靴


先日、整体のご指導をうけて、骨盤の位置を調整していただきました。
いつも操法のあとは気持ちよく背筋が伸びて、
前までがいかに固く縮こまってことに気付きます。

操法の次の日、いつも通り靴を履いて朝の支度をしていると
なんだかとっても靴の履き心地がいいことに気付いたんです。
先生にも立ち方、重心の位置が変わっていますよ、と言われていましたが
靴の履き心地まで変わるとは想像していませんでした。

言葉にするのが難しいのですが、
足全体が地面に踏みしめている感じがすごく伝わってきて
温かくて、少しくすぐったいほど心地がよくて、
しばらくその感覚に身をゆだねていました。
自分のつくった靴にうっとりしてしまいました(笑)

身体の調子でこんなにも靴の感じ方が違うなんて
初めての体験でした。
良い靴はなんだろう、
足に良い靴とはなんだろう、とまたまた考えてしまいます。
どんな調子の時でも心地よく歩かせてくれる靴なのか。
身体と調子を合わせるような自分を偽らない靴なのか。

良い姿勢だから調子がいいのではなくて
調子がいいと、自然と良い姿勢へとなるような生き方がいいなと思います。
体調が悪い日があって当たり前ですからね。
調子がいい時は、つまり感覚が豊かで優しくなっている時です。
ご飯が美味しく感じれたり
雨音が子守唄のように聞こえたり
花の香りで深呼吸をしたり
靴が大地と繋がっているように思える。



だから自分に合っている靴を探すことは
思った以上に簡単かもしれません。
いつも心身健やかに生きること。それが一番です。
二番目にてのひらワークスで誂え靴をオススメします。

2012年10月16日火曜日

靴を誂えるということ

この夏に高校生の学校指定靴をつくりました。
足と靴が合わずに、親指の爪を痛めてしまっていましたが
先日、メールをいただきました。



小林様
秋風を感じる今日この頃いかがお過ごしですか。
お陰様で娘は元気に登下校しております。
心配しておりました爪の方も完治しまして、手術等にならずに済みました。
履き心地がとても良いらしく、親として嬉しく思います。



とても嬉しい報告でした。
彼女の傷を癒す身体の力を妨げないことはできたようで、
安心しました。
今回は木型を特別に作ったわけではありません。
それでも、ただ一足の靴をつくるのではなく
右足のつま先を気遣いながら靴をつくるのでは
まったく違う結果になると思っています。
安心して一歩を踏み出せるその心と身体は
きっと健やかに逞しく育っていくでしょう。
彼女とはまた来年会う約束をしています。
子どもの成長を見守れるのは
こんなにも温かく嬉しいものなんですね。

2012年9月23日日曜日

岡村美穂子さんのお話



先日は土祭セミナーによる
岡村美穂子さんのお話を聞くことができました。

わたしの記憶の範囲ですが
間違いもあるかもしれませんが
とても素敵な1時間のお話でしたので
来れなかった方へすこしおすそ分けしようと思います。

岡村さんは仏教思想家の鈴木大拙の秘書を長年務めた方で
約半世紀前に益子へ訪れ、濱田庄司の家に泊った日のことを
丁寧にお話してくださいました。

本でしか知ることのなかった
記号のような白黒の情報としての濱田の言葉が
岡村さんがそのひとつひとつをかみしめるように何度も口に出す度に
臨場感にあふれ、当時の景色がこちらにも伝わってきて、
とても新鮮で生々しくて、私の記憶にも刷り込まれていくのが
素直に嬉しかったです。
益子参考館の見え方が変わる、そんな愉しいお話でした。

そして、「無心」ということについて
時間をかけてお話してくださいました。

アメリカで育った岡村さんは
日本の暮らしに宗教の時間がないことに戸惑い、
鈴木大拙先生にそのことを相談したところ、
「日本人にとって、文化=宗教だ」と教えてくれたそうです。
日本の文化である、道がそうです。
柔道、茶道、華道、合気道、弓道、、、
道を語る上でたびたび出てくる、無心という言葉。
それも何なのか、わからなくて、知りたくて
鈴木大拙先生に尋ねたそうです。

 人はその脳の発達のお陰で
 自我を手に入れることになった。

 自我を手に入れることで
 主観と客観の概念が生まれて、もともと1つだった人は
 その二つに分かれてしまった。

 二つに分かれたことで、
 人は迷い、止まり、間違えるようになった。
 
 それではまたひとつになるにはどうしたらよいか。
 どうしたらひとつになり、ひとつだった本来の人になれるのだろうか。
 ひとつの自分を取り戻すためには、どうしたらよいか。

 それにはただ反復しかない。
 繰り返し繰り返し、稽古に励むことで
 いつか、勝手に手が動くようになる。
 動かそうとしたら、そこにはもう自我が入り込んでいる。
 動かすのではなく、動く。

 それが無心です、と。
 
岡村さんは濱田先生のことをもう一度話してくれました。
ある朝、濱田先生が湯のみをつくっていたそうです。
それも早朝に弟子が工房へ来た時には、既に75個も出来ていたそうです。
それで、その弟子が濱田先生に夜通しやっていらしたのですか?と尋ねると
濱田先生は1時間だと、このくらいどこの陶工もやってしまうことだ、と。

つまり、少しでも自我が入り、少しでも迷えば1時間で出来るはずがないんです。
無心でないと、こんなことはできない。
身体は自分の意思で動かすのではなく、なにか別の力によって動かされている。
生きているのではなく、生かされていることを知る。

そうして生まれた湯のみはきっと
無作為で健康で美しいのでしょうね。

この話を聞いて、
靴作りも靴道となるのかなぁと思いました。
無心に至る道は、反復。
私の一番苦手な、反復。
これからのいい修行になりそうです。

2012年9月19日水曜日

terzo tempo 佐野寛君


terzo tempoのことは
3,4年前から、パタゴニアの南喫茶店から聞いていました。

terzo tempoの佐野君は、パタゴニアの南喫茶店の店番1号と
東京で音楽を通じて知り合い
5年ほど前に、佐野君は高知、一号は山梨で小さな喫茶店を始めています。

店番1号は山梨では有名な音楽家の顔をもっていて、
高知でもたいへん人気にある方です。
有名なところで言えば、牧野植物園でライブを開催している。
もちろん、terzo tempoでも。

そんな1号に高知の素晴らしさをずっと聞いてきた私は
いつか高知を訪れ、佐野夫妻に会いに行こうと思っていました。

そして、その機会が今年の春に訪れました。
高知のギャラリーM2でグループ展を開くことになり、
そのひとりとして参加させていただくことになったのです。
M2さんとterzotempoは歩いても行ける距離だったので
展示会のお昼休みを利用して、ランチを食べにterzo tempoへ。

そこで自己紹介をすると
佐野夫妻も私のことを1号から聞いていたようで
急な訪問だったのにも関わらず、温かく出迎えてくれました。

その日の夜、佐野君に飲みに誘ってもらい、一歩君(竹作家)もいっしょに
3人で夜遅くまで話をしました。
これからの生き方について。
つまりこれから私たちがつくる世界について。
高知県は経済的には豊かな県ではありません。むしろワーストに入るくらいです。
その暮らしに欠かせないものは、美味しい食べ物と明るい笑顔の仲間たち。
そのふたつが高知の自慢であり、私が惹きつけられる理由です。
食べ物を自給し、仲間で助け合い、必要な分のお金だけ稼ぐ。
それって幸せですよね。

サンダルワークリレイションは
そんな高知の夜の余韻のなかで浮かんできた取り組みです。

だから、この取り組みは
高知でどうしてもやりたかった。
高知でしかできないと思ったし、
Terzo tempoの佐野夫妻が
私の取り組みに最も相応しい場所と人を提供してくれると
感じたからです。

そして、サンダルワークリレイションは
高知の素晴らしい場所と人に迎えられて
とてもとても愉しい時間をみんなで共有することができました。
参加者は下本一歩さん、歩屋のあゆみさん、R荘の藤原君、
モントリオールからの旅人ジェレミ―、アーティストのまりこさん、
靴職人を志す石元さん、佐野夫妻。
みんなとっても優しくて温かくて、、帰りの飛行機で思わずグスンと。

私の仕事はこの日のことを次に伝えていくこと。
10月のパタゴニアの南喫茶店で
“この日のこと”が先生となります。お楽しみに。




写真は旅人ジェレミ―。
今度はモントリオールでサンダルワークリレイションやりたいと言ってくれました。
だれかいっしょに行きませんか。

2012年9月17日月曜日

土祭

土祭が始まりました。
新月16日の初日は綱神社を散策してきました。
普段は車の通りのほとんどない畦道ですが
いろんなナンバーの車が行き交っていて
もうそれだけでワクワクしてきます。

綱神社では
サウンドインスタレーション
「from the sacred forest/しんれい」(川崎義博)
を体験することができます。

境内は高い木立に囲まれていて、
その木漏れ日とともに耳に届く森の声が
ただの散策がお参りという儀式へと仕立ててくれます。

川崎さんの音が
神というか土地というか、自然と交信する装置のような役割となっているようでした。



自然の恵みで人は生きている。
人はあくまでこの自然の一部。
でも自然の大事な一部。
私たちが土地に着くことも自然の営み。

私たちが生きるこの土地に感謝することが
その土地を活性化させることでもある。
祭りとは土地の神への感謝だったはず。
人の営みは自然と共生することだったはず。

土祭では、益子のパワースポットと呼ぶべき多数の場所に
アートを奉納し、そこに人が巡ることで
その土地にパワーを満たします。
人は大事なパイプ役を務めるわけです。

土地と土地を結び、過去と未来を結びに、
土祭へ是非お越しください。


2012年9月13日木曜日

ワークショップのお知らせ

サンダルワークリレイション VOL,2
at South Patagonia Café

今日は秋の気配を感じる風が吹いていました。
いつもより増して、虫たちがワイワイしています。
蝶、トンボ、カマキリ、バッタ、コオロギ、鈴虫、クモ、芋虫などなど
みたこともない、名も知らない生命体が盛り沢山です。
引っ越してきてもうすぐ5カ月。
この身近な仲間たちに囲まれた工房にも
慣れてきた気がします。苦手なんて言ってられません。

さて今回のお知らせはワークショップです。

いつもお世話になっている
気軽の来れる世界の果て、こと
パタゴニアの南喫茶店で
サンダルワークショップをやります。
是非ご参加ください。

 
日時   10月23,24日 
場所   パタゴニアの南喫茶店
詳しくはパタゴニアの南喫茶店HP
をご覧ください。

自分の手で自分のサンダルをつくるのは
少し昔なら、当たり前のようにやっていた風景です。
草履や下駄といった私たちの履き物は材料もただ当然。
今からみれば魅力的な暮らしの知恵です。

材料を出来る限り自分で集めて
いまの生活に合った自分のサンダルをつくれる。
もし時間と材料があれば、家族や友人ぶんくらいつくってしまう。
そんな楽しげな大人たちになってもらいたくて
サンダルワークリレイションを始めることにしました。

昔の暮らしに戻ることはもうできないけれど
その暮らしの知恵は引き継ぐことはできます。
まだ完全には失わないうちに
先人の知恵を有難く授かって、
この時代でしっかりと育み、
そして次世代へとつなげてたいと思っています。
私はそんな、やさしく手を繋ぐ社会へのトランジションを目指します。


2012年9月9日日曜日

みらいのくつをつくること

新しく靴をつくる。
既製品として少し多めにつくる。
どんな靴がいいだろう。
考えてみると、とても難しい。

今までなかったものは
隙間を埋めるように
いくらでもつくることはできる。
隙間はどこにでもある。
でも隙間は埋まったら、すぐ忘れられる。
こんなにもモノが溢れているのに
これ以上何をつくればいいのだろう。
古くなったら0円になる携帯電話のように
ただ新しいだけのモノはつくりたいはない。

少し多めにつくるなら大衆的な靴がいいけれど
足のサイズは面白いくらい千差万別。
どうやったら平均の靴なんてつくれるのだろう。
そもそも誰も平均の値で作っていなくて
平均だから売れるとも考えていないんじゃないかな。
見た目の美しい方が購買意欲が湧くだろうし、
自分の足に合っていなくても、それを履くことで
格好良くなった気持ちになる、可愛くなった気持ちになる。
たぶんそれだけで十分、靴に満足しているんだろうと思う。
加えて、歩けるならそれで買う条件は満たされる。
そんな大衆的な靴は絶対につくりたくない。

例えば、ビルケンシュトックの靴は
日本中で子どもから大人までたくさんの人に支持されている。世界でもすごい人気。
それは単に履き心地がいいからでも、見た目が愛らしいからでもなくて、
世界中の人の健康を願ってカタチづくられた靴だから、
多くの人に愛されるのだ。と私は思っています。
マーケティングなんてせず、平均も隙間も狙らわずに
困っている人に手を差し伸べるように
健全な未来の姿を考えて、そこへ導こうとした靴だから愛されるような気がします。

今の暮らしをより便利に豊かにするのではなくて
みらいの世界がどうあるべきかを考えて、
今を生きることを求められている時代です。

すこしだけですが
スターネットの馬場さんといっしょにつくった新しい靴は
足もとから社会を元気にしよう、という想いがたっぷり詰まっています。
まだその一歩を踏み出したばかりですが
この靴が案内してくれる未来が
平和で笑顔が溢れる社会であることを祈っています。

メンズ40、41,42
レディース36,37,38


私はたぶんその社会を生きることはできない。
でもそれは決して悲観することじゃない。
私はその社会を創ることが使命だと思っているからです。
使命があること、
それが一番の幸せだと思うから。

自分のサンダルをつくってみる。


4年前から始めたサンダルワークショップ。
「自分のサンダルをつくってみる。」
毎年本当にたくさんの方に参加して頂き、
細い足や丸い足、外反母趾や偏平足、
どんな足にみなもそれぞれに、履き心地よいサンダルが次々と生まれました。

今年は開催することができませんでしたが
サンダルの修理をひとつ預かって、他の皆さんはどうしてるかなぁと
すこし心配な気持ちになります。
昨年はサンダルのお手入れワークショップもやったので
今年はそのワークショップもできなかったからです。
カビはえてないかな、とか
底が擦り減っていないかな、とか
留め具をなくしていないかな、とか

今回、修理をしたのは親指のストラップ。
麻糸が切れてしまい、縫いとめていたストラップが外れてしまったのです。
それでも修理はすぐにできます。それがこのサンダルのいいところです。
手入れをしながら、永年使ってもらえるように
素材もつくりもとってもシンプルにしているからです。

修理の依頼主はクロマニヨンの森田さん。
3年前にこのサンダルをつくったことがきっかけで
お会いする機会が増えて、以来仲良くお付き合いさせて頂いています。
クロマニヨンはカンボジアの万能布クロマーを
デザインから販売まで行う葉山の素敵な女性3人組です。
本当に元気で笑顔溢れる方々で
葉山に遊びに行くといつも時間を忘れておしゃべりしてしまいます。
毎月の1~5日に葉山町一色のHOUSE1891で限定ショップをしています。
10月はガレージセールもあるようです。
ぜひ遊びにお出かけください。きっと愉しい気持ちに満たされるはずです!



話はもどりますが
予約制で工房までお越しくだされば
サンダルはいつでもおつくり致しますので
お気軽にご連絡ください。
また、2013年はワークショップもやります。

栃木レザー製ヌメ革ストラップサンダル 税込16,000円

2012年9月7日金曜日

大きな虹 と 深い霧



大きな 大きな 虹をみた。

夕焼け空に 浮かび上がった 半円の虹

雨が降って 涼しい夜風と 朝の森を覆う深い霧

夜の工房では 鈴虫が小さい身体で大きく鳴いている

秋はもうすぐだ



 

2012年9月6日木曜日

オーガニックハンドルーム

スターネットのオリジナルブランド
オーガニックハンドルーム

私がこのプロジェクトに参加するようになったのは2年前です。
馬場さん(スターネット主宰)と初めて会ったのも同じです。
そこで馬場さんから「東京で靴屋でもやりませんか?」と
本気なのか冗談なのかわからないお誘いを受けたことを
今でもその場面を鮮明に覚えています。
(その半年後、スターネット東京がオープンしました。)

馬場さんはマスプロダクトはもうやらないと仰っていたけれど
以前から、現在世に出回っているモノの質の低下を気にしていたようです。

既製靴を生み出すことに
最初、私は疑問を感じていましたし、反対の気持ちもありました。
ですが、頻繁に会うようになり、いろんな話を重ねるごとに
今までのマスプロダクトや既製品とは全く違うことをやろうとしていることが
わかってきました。
このプロジェクトではたくさん売れるモノをつくりません。
本当にいいモノをつくりたいという熱い気持ちを持っているけれど
高くなったり、売れないかもしれないからつくれない。
そういうジレンマを持っている人はたくさんいると思います。
馬場さんはそういう気持ちを受け入れます。
心から創りたいモノを無理しない程度に
丁寧につくって、ゆっくりと世に届けていくプロジェクトです。
たくさん売れたら失敗なんです。

「時間はかかるよ。」いつも馬場さんに言われることです。
それは今のジェットコースターのような都会に流れる時間感覚とは違う、
ゆっくりと歩くことを許してくれる益子の田舎時間のことだと思います。
その時間感覚に自分をチューニングしていくことを教えてくれます。

馬場さんはきっと人がとても好きです。
モノづくりも好きだけど、
人と会って気持ちを通わせて、
バランスよくこの世界をプロデュースしている人です。
世界が偏りを見せた時に、世に現われる、そんな人です。
(新興宗教と間違えられるのもわかります)

starnetの服と写真展
[益子]2012.9.9sun - 9.19wed ギャラリー遊星社
スターネット工房「art workers studio」で作られる
オリジナルブランド「organic handloom」。

今秋冬の洋服は、これまでのフェミニンなイメージから
メンズライクでトラディショナルなデザインに一変。
素材はこれまで以上に「着心地」を追求したナチュラルなものに。

着こなし方で幅広いシーズン・シーンに対応できる
暮しのための服の発表会です。

同時に、制作に携わる職人やデザイナーを写した
村田昇さんによる写真展も開催します。
是非ご高覧ください。

山の食堂(2010年夏、現在休業中)
鉄の看板の製作は中澤恒夫さん(那須の鍛冶工芸家)

てのひらワークスをシェアしましょう。

靴を自分の手でつくる仲間を募集します。
実際に靴をつくるすべての作業を体験することができます。

私は身体と環境に優しい靴が好きです。
だから少しだけ約束ごとがあります。

1、1年で1~2足の靴をつくります。
そのくらいがちょうどよい加減とします。

2、身体から自然と成るカタチの靴をつくります。
靴をつくらず、健康な身体をつくることがゴールです。

3、日本の森の動物たちの革靴をつくります。
豚や鹿、イノシシたちと共存する道を歩むことにします。

いつも履く靴に困っている方。
田舎でゆっくりモノづくりをしたい方。
家族の靴を手づくりしたい方。
この消費社会から少しでも持続可能な社会を望んでいる方。
そんな方が集い、手仕事を分かち合う時間を望んでいます。


第一期 2012年秋~2013年春
10月27,28日/11月17,18日/
3月16,17日/4月20,21日
11時~17時
参加費 60,000円(子ども靴割引有ります)
参加ご希望の方はご連絡ください。

靴をつくることで
得することはありません。
損することもありません。
靴のことが
もっと好きになることだけです。

友人から頂いた古布の草履
友人のお母様の手づくりです。

こんな素敵な手を育みながら歳を重ねて
こんな素敵な贈り物が
なんてことのない1日の暇つぶしと言って笑う人に
私はなりたいのです。
同じ想いの人いませんか。

2012年9月2日日曜日

月光

窓から見える8月31日の満月。
ひと月に2度目の満月をブルームーンと呼ぶみたいです。

東から顔を出し、
南の空の天高く頭上高く浮かび上がっていく。

月の灯りになんだか安心して
夜の工房でついつい仕事をしてしまいます。

言い忘れましたが
一歩さんの住む村の森には、乙事主が在るようです。
一歩さんの目撃情報によると
大きな馬と間違えるほどらしいです。

ブルームーンが照らす森に現われる。
としたら、神秘的ですね。


2012年9月1日土曜日

下本一歩さん

一歩さんと初めて会ったのは
2年前の葉山での高知展の時でした。
その時はあまりお話する機会がありませんでしたが
この春に私が高知で展示会をしたときに、再会することができました。
一歩さんのことを昔から知っているかのような不思議な感覚があって
久しぶりのお酒もあって、ついつい私がしゃべりすぎて
夜遅くまでお酒を飲みながら付き合ってもらいました。ホント優しい方です。
多様な人達がいっぱい集まる高知のterzo tempoの佐野君もいっしょだったのですが、
近いうちにterzo tempoで、てのひらワークスのワークショップをすることまで
一晩のうちに決まって盛り上がりました。

高知でのワークショップのことはまた後日書きますね。

そのワークショップで7月にふたたび高知に訪れた時に
一歩さんの家に泊めてもらいました。
ワークショップも楽しみでしたが
実はこの一歩さんの家が一番楽しみにしていたことでした。

一歩さんは高知の山深い村で暮らしています。
街中から1時間くらい山道を車で走ると小さな村に着きます。
そこに一歩さんが数年かかって建てた手づくりの自宅兼工房があります。
豊かな森に囲まれたその場所は
清流の涼しげな流れや山の鳥の声、森を揺らす風の音に満ちていました。
ここで一歩さんは、
薪を割り、草を刈り、畑を耕し、炭を焼き、匙をかたちづくる。
たった1日の滞在でしたが、
この場所の美しい四季と逞しい人の力を感じられる体験でした。
一歩さんから頂いたこの体験が
私のこれからの生の大きな原動力になって
栃木へ帰ってからもまだ鮮明に生々しく思い出すことができます。

そんな一歩さんから展示会のお葉書を頂きました。
下本一歩展 黄色い鳥器店(東京都国立市)
9月1日~9月9日 会期中無休
 1日~3日は一歩さんが在廊しています。
 2日はterzo tempoのかき氷、
 3日は美味しい日付深田名江さんのお料理をお楽しみいただけます。
 是非、足をお運びください。

先月、一歩さんからメールを頂きました。
そこに書かれていた一節を紹介します。

  僕は自分が何を大事に仕事をしているのか
  まだ言葉にできません。
  たぶん「愛」だと思ってます。

この素直な純粋な心が展示会に訪れた人に伝われば嬉しい。
 

2012年8月23日木曜日

曽田耕さん

先日、曽田耕さんが我が家に遊びに来てくれました。
曽田さんは日本を代表する革を使う作家です。
耕さんと会うといつも話題は子どものことばかり。
3児の先輩パパの言葉にいつも励まされています。そして、
私の先生であるモゲさんとの対談の話や
10年以上の付き合いがある相馬さんとの出会いなどなど。
短い時間でしたが、本当に愉しい時間でした。
会ってお話するだけで元気なってしまう、不思議な力の持っている方です。
会ったことのある方はみな、いま、うなずいているはずです。

曽田耕さんの作品に新しい刻印が押されています。
そのメッセージはさりげなく、そして格好良く作品に添えられています。

nuKes nO more

耕さんがどんな想いでこの靴や鞄をつくったのか考えてしまいます。
デモで叫ぶことではなく、靴や鞄をつくることを選んだのはなぜか。
ストレートに原発反対!と言わず、可愛く手を加えたのはなぜか。
きっと受け取った人への優しい気遣いだろうと私は思いました。

ふざけているようで大真面目で
真剣なようで遊んでいる。
そんな耕さんの仕事でたくさんの人が救われているような気がします。
それが作家の仕事なんだろうなと思う。

耕さんは私たちにきっとまだまだメッセージを隠し持っているような気がします。
それを知りたければ、是非展示会へ足を運んでみてください!

  曽田耕さんの個展(曽田さんのHPから抜粋)
   8/24(金)~9/4 (火) 個展『100 shoes  (さる靴つくるさ)』 
   カロカロハウス(神奈川・茅ケ崎)にて。
   10:00~18:00。水(8/29)木(8/30)は定休日。8/24初日、在廊します。
   しばらくグループ展がつづいていましたが、久しぶりに個展を。
   本業ど真ん中の靴を100足。たっぷり準備期間を設けてのぞみます。
   靴だらけの冊子も製作。絵も。お楽しみ頂けるはずです。

この世界には
靴で世界を幸せにしようと考えている人がいるように
原発で世界を幸せにしようと本気で考えている人がいると思っています。
石油で、株で、禅で、食で、自給自足で
世界を幸せにする方法は人の数だけあって
様々な人が社会を豊かに幸せに導こうとしています。
そのなかの
おそらく一部の人が人々の幸せよりも
自分の幸せ、自分のお金のために原子力を利用しようとしたのです。
その結果、大きな事故が起こりました。
世界中の人が大きな傷を負いました。
その方達に少しでも安らげる場所をつくりたいのです。
傷を癒し、心から笑える日が来るまでには、まだまだ時間が懸かるのです。
だから、それまでしばらくはお休みになってください。

2012年8月21日火曜日

残暑お見舞い



遅くなりましたが
残暑お見舞い申し上げます。

まだまだ暑い日が続くようですので
身体を壊さないように気をつけましょうね。

昨日は庭でサワガニを見つけました。
それだけでちょっと涼しい気持ちになります。

2012年8月18日土曜日

花火


お盆が過ぎても
まだまだ暑い日が続いています。
それでも朝晩は気温が下がり、
山からの涼しい夜風が一日の疲れを癒してくれます。

ドン、ドンと大きな音が近くでするなぁ、と思ったら
窓に映る綺麗な打ち上げ花火。
夜空にひかりの輪が広がって、遅れてドンッと聞こえてきます。
私はその間が好きです。

田舎の小さなお祭りの
派手な告知もない小さな花火大会。
耳をすますと聞こえてくるほどの
お祭りを楽しむ人々の歓声が心の奥に響いて、なんだか良い心地になります。

子どもを授かってから
花火大会はもちろん、夜に出歩くこともなかった私たちですが
今年は家の窓から大きな花火を楽しむことができました。

来年は出かけてみようかな。



2012年8月12日日曜日

うねり


8月11日。スターネット益子で行ったワークショップ。
おうち靴をつくる。

おうちとは
家の内の意味と体の内の意味。

靴をつくることを目的ではなく、
心身をゆすって興すことが目的。
靴のそのなかの一つの手段。

みんな自分のうちと向き合って、気付きがあって
とっても愉しそうでした。

ひとりずつをみんなで観察して
その人の感じていることを想像してみると
身体も心もつられていくんです。
その人が心地悪そうだと、こちらもむずむずして
その人が心地良さそうだと、こちらもすがすがしい。

いつからか
ワークショップは手軽に自己満足を楽しむツールになってしまって
それはたびたび配慮にかけ、自己中心的になりがちでした。
でも、
私のやりたいことはみんなで輪になること。
ただつくる、ただ話す、ただ悩む。
ただの行為も人が集まると、それが相互に動き出して大きなうねりになって、
1+1が2にも3にもなる。それがまた自分に還ってくる。

ひとりじゃできないこと、わからないことだらけです。この世界は。
たまにはお節介をしたり、口を閉じ耳を傾けることも必要なんだと思います。
私の場合、後者の意識を出来る限り持つように心掛けています。
いつも余計な手出し口出ししてしまうんです。
つくづく青いなぁと思います。

2012年8月7日火曜日

グー

今年の夏は
鼻緒のサンダルをつくりました。
自分の履きものをつくるのは久しぶりです。

鼻緒のサンダルは一見とても簡単そうにみえますが
いざつくってみると、なかなかうまくいかないのです。
もちろんすぐにカタチには成りますが、
履き心地が悪くて、なんだか腑に落ちない。
じつはこれを数年繰り返していました。
すっかりつくる気が失せてしまっていたのですが
また火がつく出来事がありました。

昨年の夏に、葉山の子どもたちと一緒につくった鼻緒サンダルワークショップ。
自分でサンダルをつくる楽しさが部屋全体を包んでいる愉しい会でした。
先日、そのワークショップに参加してくれたご家族に会いに行ったのですが
そのお宅まであと少しというところで、
向かう先から女の子が元気良く走ってきます。
誰かはすぐにわかりました。その家族の長女Sちゃん。
そして、履いている一緒につくったサンダルにも。
今年もまた履けるよ!とその黄色いサンダルを見せてくれました。
これには本当に感激しました。本当に胸が震えました。

鼻緒でアスファルトの上さえも軽快に走るSちゃんに刺激を受けて
また自分のサンダルをつくる気になったのです。

鼻緒のサンダルは足をグーにして掴まなきゃなりません。
指をパーのように伸ばすことばかり健康靴は謳うけれど、パーのままでも駄目なんです。
グーからパー、またグー。
掴んで(拡げて)、また掴んで。
足をパーにしてしっかり地面を踏みしめて、
蹴りながらグーにして足をぐっと持ち上げる感じ。

鼻緒サンダルはあのシンプルなカタチのなかに
グーとパーのふたつの状態の足を含んでいて、
歩く動作に一番近い履き物かもしれません。
今後もいろいろと試したいことがあって
靴作りにますますのめり込んでいくのでした。

写真はSちゃんの手づくりサンダル。

2012年8月1日水曜日

ひかり

社会が大きく揺らいでいる。

不安な気持ちがあふれている。

戦争という文字が浮かんでくる。

戦いたくない。傷つけたくない。

下を向いてもいられない。

強い者にかみつかずに、

弱い者に手を差し伸べられるなら

迷いはない。

それなら私にもできる気がする。

国民の暮らしを決めるのは政治家ではない。

私たちの暮らしは私たちで決める。

ひとそれぞれ違ったっていい。

幸せはみんな同じではないこともわかっている。

私には愛する人たちがたくさんいる。

生き方も仕事も、目指す未来も、全然違っても

めでたいことはいっしょに喜び

悲しいことはいっしょに涙する。

矛盾していてもいい。嘘をついてもいい。

きっとひとりではない。ひとりだったら決していまはない。

そうやって私は

この世界とかろうじて繋がってきたんだと思う。

そして、これからも同じことを繰り返す。




愛する妹の結婚を前にそんなことを心から思う。

2012年7月31日火曜日

大切な時期の靴

学校指定靴が足に合わないために
足を痛めてしまった高校1年生からメールを頂きました。

とても素直で芯のある女の子で
靴がとても大事なモノであることをちゃんと理解していたのだけど、
その足自体はとても健康的な足をしていてなんの問題もないのに
学校の規則のために、その規律を守ろうとしたために
もはやその学校指定靴を履けないほどに、足を痛めてしまったのです。

指定靴や制服を否定するつもりはありませんが、
学校がそれを指定し義務付けるなら
やはりちゃんと足のサイズを測ることが必要だと思います。
靴を買う場所を決め、そこでシューフィッターに靴を選んでもらうこともできるはずです。
ちゃんとしてほしいなぁとつくづく思います。
足に合っていない靴となると、学校生活に支障をきたすことになってしまい
身体の不調、心の不調へと繋がっていきそうです。
歪んだ姿勢では健全な精神も育むこともできないでしょう。

自らオーダーメイドの靴屋を探し、自らの判断でつくり手を決め
詳しい料金もプロフィールも、学校の靴ができるとも書いていない、
不親切で自己満足的な私のところへ
たぶんとても緊張しながらメールを書いてきたんだと、想像します。
彼女の気持ちに応えるには十分すぎるほどのお手紙で、
優しい靴をつくってあげたいなと思いました。
この夏休み中(やく半月で)に仕上げます。
この納期は今までで一番早い。でもそれは必要なことですので、
お待ち頂いている大人の皆さま、ご理解下さいますようお願い致します。

仕事は自分でつくっているつもりでしたが
実はほとんどが他者から頂きものだったりします。
学校の靴をつくれますよ。どうぞいらしてください。と示すより先に
学校の靴をつくってください。そんな仕事はいかがですか。と差し出される。

たぶん世の中には身近なところも含めて
まだまだ潜在している悩みがくすぶっているような気がします。
そんな人にこれからも巡り合えることを願っています。

2012年7月22日日曜日

身体の延長

ヌメ革とコルクと天然ゴムの朴訥として可愛らしいサンダルができました。
このサンダルはあつらえ靴のお客様Oさんの2足目です。

Oさんは左右で足の長さが異なるため、片足は背伸びしているような姿勢でした。
ご自身でも既製靴の中敷きにコルクを入れるなどして工夫もしていて、
スノーボードもそんな風にして上手に滑っているくらい、
自分の身体とうまく暮らしています。
Oさんをみていると、身体が左右対称であることとか、まっすぐだとか水平だとか
見た目には大事なことかもしれないけれど
身体が整っていることとイコールではないことを教えてくれます。
それでもサンダルだけは足を出すカタチが多いために、
見た目に難しく、夏の履き物には困っていたようでした。

このサンダルで
Oさんが夏を楽しく過ごせるようになってくれたら嬉しいです。

サンダルをつくるときは、前職の装具屋さん仕事を思い出します。
サンダルは足の動作を出来る限り妨げずに
それでいて、足にしっかりに付いてくるようにつくらなければなりません。
それはまさに装具の考え方です。
装具には飾り付けがありません。歩くことに必要ないからです。
それでもフォルムや素材で美しく、格好よく、可愛く、素敵に仕上げることができます。
それは身体を美しくすることでもあるかもしれません。

格好の良いサンダルをつくることより
格好の良い身体をつくれるようになりたいと思っています。

身体と遠く離れて、身体と交わらないモノよりも
身体の延長線上にあるモノをつくることが
ずっと道具としての魅力があると思うからです。


2012年7月17日火曜日

先日、3回目となる蛇との戦い。
狙っているわけではないのですが
つばめの巣に近づこうとする蛇君に
ちょうどそのタイミングででくわすのです。
また見つかった。。と残念そうに逃げていく後ろ姿。
その勝負運の悪さが哀れで、
なんだか同情して駄目な奴だな~と
今度は見付かるなよと言いたくもなります。

そんなことを知ってか知らずか
2羽の燕が慌ただしく飛び回っているなと思っていたら
小さいお顔がチラチラ。小さな鳴き声がチッチッ。
雛が無事に産まれたようです。
ほっとしました。

先日、保健所から電話があり
地元の高校生に子育ての話をしてもらえないか、とお願いをされ
家族3人で高校生たちに会いに行ってきました。
同じように依頼を受けたご家族も集まって
地元の高校生たちと数十人に囲まれて
和気あいあいと賑やかな集会となりました。

そのとき、高校生からの質問で
「赤ちゃんが産まれて嬉しかったことはなんですか?」
と聞かれてうまく答えることができませんでした。

うれしい、と思ったことがすぐに浮かんでこなくて
辛いこと、大変なことばかりだったことに改めて気付きました。
嬉しいことがあるから、子育てをしているわけではないし
見返りがあると信じているわけでもない。
でも自然と身体は動いている。
一生懸命になれることに理由はないんだけど
その高校生は、子育てにはなにか旨味があると純粋に信じているんだなと思いました。

私もそうでした。幸せそうな家族をみて、そう信じていました。
でも子どもを授かってからは毎日毎日と1日単位で区切れないほど
休みなく子育てに追われて、それは思い込みであることに気付かされます。
親になってわかったことは
嬉しいより、楽しいより先に
勝手に身体が動くようになること。
命を育むのはおなじ命。
大きいも小さいもない。
必死で生きようとする命に、必死になって命で応えなきゃ
小手先では通用しない。
でもその繰り返しのなかで
いっしょに成長しようと希望ばかりが目の前に浮かぶ。
だから子育てが愉しくて仕方がない。

つばめさんも毎日必死に蛇や雀と戦いながら
雛に餌を運んできます。休んでいる暇などありません。

育児は大変でしょう。
大変だなんて考えたこともないよ。当たり前のことだから。
頭で考える前に、身体ふかくからの衝動に素直に動いているだけだよね。
そうなんだよ。理由もなく可愛くて可愛くて仕方がないんだよ。

2012年7月16日月曜日

さようなら原発

さようなら原発10万人集会

本日16日、東京都渋谷区の代々木公園で
「さようなら原発10万人集会」がひらかれます。

デモをすることはそんなに好きではないんだけれど
さようなら原発、という言葉の響きが好きです。
参加する予定はありませんが
その時間、心だけは共に過ごそうと思っています。

さようなら。ありがとうございました。原子力発電所。




2012年7月12日木曜日

靴を洗ってますか。

気持ちのよい靴は洗える靴だと思います。
クリームをぬったり、オイルをぬることも大事なお手入れだと思いますが
まずは水で洗ったり、綺麗な布で拭いてあげるほうが
靴も気持ちいいような気がします。
美しい革を求めるなら、足すよりも引いたほうがいい。
引いて引いて現われてくる真の素材に惹かれます。
私の毎日履いている白なめしの革靴。
日々の庭仕事でついた土や埃の汚れをタワシで洗い落としました。
靴を履いたままでゴシゴシ。
湿った革を綺麗に拭いて、風が気持ちいい庭先に干して終わり。10分でできます。
乾いた革は、また一段と綺麗で温かな白色になりました。



白なめし革は中国から伝わってきたなめし技法で
1000年以上前から日本の姫路で伝承されてきました。
塩と菜種油だけで仕上げています。
効率性とか生産性など無視した職人の手仕事による天然革。
製品となったあとも、
汚れは水で洗い、太陽で干して使い続けるなかで
ますます白くなっていく様は、天然素材だけがもつ強さを感じます。
原革は西日本の鹿やイノシシの革。
害獣として殺されてしまった野生の動物革を使っています。
捨ててばかりだったその革を、引き受けたのが
現在世界でただ一人白なめしを受け継いでいる新田さんでした。

あつらえ靴で白なめしを使ってほしいという声も多く頂きます。
私もこのような背景のある革を
これからもあつらえ靴に仕立てていきたいと思っています。



靴を洗っている横で
プールでアヒルと遊ぶ息子と
それをのぞきに来た赤いカニさん。
まさかカニさんまで遊びに来るとはびっくりです。




そして今日もまた嫌な予感がして燕の様子を見に行ったら
おんなじ蛇が巣に接近中。
持っていた棒にからめて投げ飛ばして、それをうしろで見ていた妻に
ちょっといいところをみてもらうことができました(笑)

2012年7月6日金曜日

よろこび


家の周りには梅の木がたくさんあります。
とってもとっても取りきれないくらい梅が鈴なりに実っています。
すぐにでも梅干しや梅ジャムなどなどつくりたいところですが、
まずは収穫した梅を細かく砕いて
福島原発由来の放射性セシウムがどのくらい含まれているのか検査してもらうことに。
昨年はセシウムが少なからず検出させたようで、今年はどうかなと不安でしたが
結果はセシウム137,134合計で6,0ベクレル/キロでした。
137,134ともに3以下であり、下限値3,6の計測方法だったため正確ではありませんが、ほとんど検出しなかったことになります。
大田原の梅は一部出荷自粛要請のことを考えると
昨年よりも低くなったことと一ケタ台であることが良い結果だったと思っています。

そしてやっと調理開始。
しばらくはこんな感じで、これは食べられるのかな?って
身の周りを疑うようになるでしょう。
でも私たちはそれから考えるようになる。
どうしたら、
放射能や農薬、排気ガス、化学薬品と暮らしていけるのか。
知恵を絞るようになって、丈夫な身体をつくって
ただ生きることに力を注ぐことになる。
私はそれを生の歓びだと思っています。


2012年7月3日火曜日

幸せな赤い靴


私の仕事のほとんどは注文靴のため
めったにサイズサンプルをつくることはないのですが
一昨年、展示用に久しぶりに少しつくりました。
私の場合、色は直感というか適当に選ぶところがあり、
自慢することではありませんが
この色が売れるだろうとか使いやすいとか一切考えません。

そして訳もなく選んだのが赤い革の靴。

ある日の展示会でお客様Sさんが
試し履きで履いたその赤い靴がとても履き心地が良いと感動してくださり、
サンプルのこの靴を買うことはできないでしょうか、と尋ねられました。
売り物ではないと説明はするのですが
この赤い靴の気持ちにもなれば
もうそろそろサンプルとしての仕事を終え
大切にしてくれるご主人と幸せに暮らしたいだろうなと思い
承諾いたしました。
実際、足にちゃんと合っていましたし
心地良さの気配もとても伝わっていました。
シンデレラのような話です。

先日、工房まで靴を引き取りにいらしてくれたのですが
これがまた可愛い車に乗っていたんです。
幸せマーチって覚えていますか。
見つけると幸せになるという日産のCMありましたよね。
綺麗にお手入れされた水玉模様のみずたマーチ、初めて見ました。
Sさんは車の移動が多いみたいなので
この赤い靴もこんな車に乗れて幸せだろうと思います。
そしてこれからは
みずたマーチのように出会う人を幸せにするような靴になってほしいと思っています。

そしてまた赤い靴のご注文がはいり
今日、東京のお客様のもとへ発送します。
幸せを届けるような気持ちになります。
つくる私もなんだかいい気分になります。
赤い靴をみたら幸せになるかもしれません。

2012年7月1日日曜日

相馬紳二郎さん



栃木に相馬さんという靴の作家さんがいることを2年前に三浦の器屋さんで知りました。
靴は独学で、注文品は1年待ち。農業もこなすとても生きる力の強い人という印象でいつかお会いしたいなと思っていました。

茂木へ引っ越してきて、まだ家の中が段ボールだらけの中で始まったGW期間中のスターネットでの展示会。
告知もほとんどなく、ふらっと来てくれたお客さんに手渡しでご紹介するような緩やかな展示会。

ある日の夕方に
タダものではない雰囲気の男性が訪れ、興味深く靴を眺めてくれていたので
声をかけると「相馬といいます。」と自己紹介され手を差し出してくれました。
それからいろいろと閉店時間を過ぎても話は尽きず、
帰り際に名刺を頂き、住所をみると茂木町の文字。
まさか町までいっしょとは思ってもいなくて、ほんとうに驚きました。

先日、相馬さんが展示会のハガキをもって遊びにきてくれました。
地元のおまんじゅう屋を教えてくれたり、茂木の野菜やお米のことを教えてくれたり、
放射能測定所も相馬さんに教えてもらった情報です。

相馬さんの靴は独学ながら歩くことをちゃんと考えてつくられていて
手孝足想を地でいく方。私も見習いたいと思うモノをつくる姿勢です。
また材料のことも深く考えられていて今当たり前のように買える素材が明日買えなくなるかもしれないと想定しているそうです。
相馬さんの今できることを明日に頼らず暮らす日々を想像します。

いまほとんどの革やその他靴づくりに必要なの材料も輸入品です。
世界経済の情勢や政治判断によって、状況がかわる不安定なモノです。
また国産の素材にしても、多量生産品だったりそれこそ今問題になっている大量のエネルギーを使う製品だったり。
またそれは靴の材料だけのことではなく、身の回りの食品から家にいたるほとんどすべてのモノに対していえることでもあります。
相馬さんは廃材を好んで使っていますが、それは素材も自給することの表れだとよくわかることができました。
いつも愛用している10年履いているというご自身の靴がとても素敵な雰囲気でした。
それはお金を出しても買えませんが、相馬さんの靴を10年履いて歩けば手に入ります。

展示会のお知らせ
 6月30日~7月8日 「7+1」
うつわとくらしs o l 神奈川県三浦市 
 8月1日~8月5日  「白イうつわ 革ノくつかばん展」
自家製天然酵母パンとケーキの店 樸木 奈良県生駒郡 
 
見方をかえてみると
身の回りにあるモノはお金では買えないものばかりです。
時間が経ち愛着のあるこの靴が壊れてしまったら
同じものをつくることも買うこともできません。
今日、製作に使った豚の革とまったく同じ革はありません。
今日、食べた今年実った梅の実も来年とれるかどうかわかりません。
今日からつかまり立ちをはじめた息子と
昨日の芋虫みたいにゴロゴロしている息子も別人です。
そんな風に世界を眺めると
もうどんな存在もかけがえのない、いとおしいモノに変わっていきます。
すべてのモノを自給することは難しいけれど
すべてのモノを大事にすることから始めてみれば
たとえそれが100円で手に入れたモノでも
もう次の瞬間からいくら積まれても譲れないモノになるかもしれません。

時間がすべてのモノに固有性を与えてくれる。
時間はお金ではなく、時間はいつもただの時間。
長いか短いか、速いか遅いか、ひとそれぞれ持っている時間。