2013年10月18日金曜日

イミテーション


「本物じゃなくても君を癒せるなら。」
Mr.children 「イミテーションの木」の一節です。
僕はこの歌がとても好きで、よく工房でも聞いています。

先日、高校生に通学用のローファーを作らせてもらいました。
学校で指定されているローファーが
足に合わなくて、かかとをいつも傷つけてしまうようで
見てみると、踵の骨にすこし特徴があり、
既存の靴の踵の形状と合わないことがわかりました。
こうなると、どんなにすぐれたローファーメーカーでも
足に合ったものを見つけるのは難しい。
だいたいどのメーカーも
木型の踵の形状は決まっていて、
それでいて良い靴ほど踵を支えようとしっかりと固くしているからです。

そんな本物の靴が足に合わないなら、
それは彼女にとって本物ではない。
本物とはなんだろう。
目に見えていることだけで判断していいのかな。
多数のの声に従っていればいいのかな。

木型を彼女用につくることもできたのですが
それでは、コストも高くなってしまうし、
そこまでして本物に近づける必要性を感じれなくて。
そんな時、イミテーションの木が胸に流れる。
一見すると、普通のローファーだけど、
踵は柔らかかったり、足指は伸び伸びできる、
中身、履き心地、構造が違う、
イミテーションローファー。

一目でわかる彼女のローファーだとわかる
いっしょに考えたトライアングルホールのベルト。
軽い印象のこげ茶のステッチ。
柔らかくホールドするヒールカップ。
その全てが、イミテーションという魔法で
本物以上に本物になる。

履いた瞬間の嬉しさと驚きの表情は
本当に可愛らしかった。
鏡をみて、足もとをみつける姿は、
通学靴を選んでいるというより、
お気に入りの靴を履いている女の子。
きっと将来、
足に傷のない綺麗な女性になるに違いない。