2012年7月1日日曜日

相馬紳二郎さん



栃木に相馬さんという靴の作家さんがいることを2年前に三浦の器屋さんで知りました。
靴は独学で、注文品は1年待ち。農業もこなすとても生きる力の強い人という印象でいつかお会いしたいなと思っていました。

茂木へ引っ越してきて、まだ家の中が段ボールだらけの中で始まったGW期間中のスターネットでの展示会。
告知もほとんどなく、ふらっと来てくれたお客さんに手渡しでご紹介するような緩やかな展示会。

ある日の夕方に
タダものではない雰囲気の男性が訪れ、興味深く靴を眺めてくれていたので
声をかけると「相馬といいます。」と自己紹介され手を差し出してくれました。
それからいろいろと閉店時間を過ぎても話は尽きず、
帰り際に名刺を頂き、住所をみると茂木町の文字。
まさか町までいっしょとは思ってもいなくて、ほんとうに驚きました。

先日、相馬さんが展示会のハガキをもって遊びにきてくれました。
地元のおまんじゅう屋を教えてくれたり、茂木の野菜やお米のことを教えてくれたり、
放射能測定所も相馬さんに教えてもらった情報です。

相馬さんの靴は独学ながら歩くことをちゃんと考えてつくられていて
手孝足想を地でいく方。私も見習いたいと思うモノをつくる姿勢です。
また材料のことも深く考えられていて今当たり前のように買える素材が明日買えなくなるかもしれないと想定しているそうです。
相馬さんの今できることを明日に頼らず暮らす日々を想像します。

いまほとんどの革やその他靴づくりに必要なの材料も輸入品です。
世界経済の情勢や政治判断によって、状況がかわる不安定なモノです。
また国産の素材にしても、多量生産品だったりそれこそ今問題になっている大量のエネルギーを使う製品だったり。
またそれは靴の材料だけのことではなく、身の回りの食品から家にいたるほとんどすべてのモノに対していえることでもあります。
相馬さんは廃材を好んで使っていますが、それは素材も自給することの表れだとよくわかることができました。
いつも愛用している10年履いているというご自身の靴がとても素敵な雰囲気でした。
それはお金を出しても買えませんが、相馬さんの靴を10年履いて歩けば手に入ります。

展示会のお知らせ
 6月30日~7月8日 「7+1」
うつわとくらしs o l 神奈川県三浦市 
 8月1日~8月5日  「白イうつわ 革ノくつかばん展」
自家製天然酵母パンとケーキの店 樸木 奈良県生駒郡 
 
見方をかえてみると
身の回りにあるモノはお金では買えないものばかりです。
時間が経ち愛着のあるこの靴が壊れてしまったら
同じものをつくることも買うこともできません。
今日、製作に使った豚の革とまったく同じ革はありません。
今日、食べた今年実った梅の実も来年とれるかどうかわかりません。
今日からつかまり立ちをはじめた息子と
昨日の芋虫みたいにゴロゴロしている息子も別人です。
そんな風に世界を眺めると
もうどんな存在もかけがえのない、いとおしいモノに変わっていきます。
すべてのモノを自給することは難しいけれど
すべてのモノを大事にすることから始めてみれば
たとえそれが100円で手に入れたモノでも
もう次の瞬間からいくら積まれても譲れないモノになるかもしれません。

時間がすべてのモノに固有性を与えてくれる。
時間はお金ではなく、時間はいつもただの時間。
長いか短いか、速いか遅いか、ひとそれぞれ持っている時間。